東京高等裁判所 平成11年(行ケ)313号 判決 2000年7月19日
原告
株式会社サンポウロック
代表者代表取締役
A
訴訟代理人弁理士
B
同
C
被告
特許庁長官 D
指定代理人
E
同
F
同
G
同
H
同
I
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた判決
1 原告
特許庁が、平成8年審判第8862号事件について、平成11年8月20日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨
第2当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は、平成6年9月26日、意匠に係る物品を「保管庫」とし、その形態を別添審決書写し別紙第1記載のとおりとする意匠(以下「本願意匠」という。)につき意匠登録出願(意願平6-28755号)をしたが、平成8年3月25日に拒絶査定を受けたので、同年6月6日、これに対する不服の審判の請求をした。
特許庁は、同請求を平成8年審判第8862号事件として審理したうえ、平成11年8月20日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年9月4日原告に送達された。
2 審決の理由の要点
審決は、別添審決書写し記載のとおり、本願意匠が、本願出願前に頒布された意匠公報に記載され、意匠に係る物品を「金庫」とし、形態を別添審決書写し別紙第2記載のとおりとする登録第900552号意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであり、意匠法3条1項3号に該当し、意匠登録を受けることができないとした。
第3原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由中、本願意匠及び引用意匠の認定(審決書2頁2~14行)、両意匠の意匠に係る物品の共通性の認定(同2頁15~16行)、本願意匠と引用意匠の具体的構成態様の共通点(1)~(3)及び差異点(イ)~(ハ)の認定(同3頁5行~5頁16行)は認める。
審決は、本願意匠の特徴である基本的構成態様を誤認したため、本願意匠と引用意匠との基本的構成態様における共通点の認定を誤るとともに両意匠の相違点を看過し(取消事由1)、さらに、両意匠の類否の判断を誤った(取消事由2)ものであるから、違法として取り消されなければならない。
1 取消事由1(基本的構成態様の認定誤り及びこれによる相違点の看過)
本願意匠は、箱体本体の上面に取り付けられている扉部と操作パネルが、箱体本体の上面において、両側面壁及び背面壁の内側に埋没状態に取り付けられている構成態様に物品としての特徴的な形態が存し、この点が本願意匠の基本的構成態様と認定されるべきものであるが、この認定を欠く点で審決には誤りがある。
そして、引用意匠は、箱体本体の上面に取り付けられている扉部と操作パネルが、箱体本体の上面の全部を覆うように載置状態に取り付けられている構成態様である点で、本願意匠の基本的構成態様と相違するにもかかわらず、審決はこれを看過し、かえって、「錠操作パネル部・・・の残余の上面を後辺側を回転軸として開閉する方形板状の扉(蓋)部と」(審決書3頁1~3行)する点を本願意匠と引用意匠の基本的構成態様の共通点とする誤った認定をしている。この共通点とされる形態は、引用意匠のみが有するものであって、本願意匠は、「その残余の上面」が扉部となっていない(下記aの額縁状の形態参照)。
そして、このような基本的構成態様の相違に伴って、以下の具体的構成態様の相違が生じているが、審決は、これらの相違点も看過している。
a 平面図(引用意匠では正面図に対応)において、本願意匠は、両側面壁が「額縁状」に現れるのに対し、引用意匠では、操作パネルと扉部とで箱体本体の上部を全面的に覆った形態である。
b 正面図(同底面図に対応)において、本願意匠では、両側面壁の上部が「門柱状」に現れ、埋設された操作パネルとの境界部分が二重線で現れるのに対し、引用意匠では、箱体本体の上面に、両側壁いっぱいまで操作パネルが載置状態で配設されている。
c 両側面図及び背面図(同平面図に対応)において、本願意匠は、単に長方形の壁部が現れるのに対し、引用意匠では、操作パネルと扉部とが載置状態にあって、箱体本体の上端との間に明確な区画線が看取され、また、扉部の後端が丸みをもって形成されている点が顕著に看取できる。
2 取消事由2(類否判断の誤り)
審決は、本願意匠と引用意匠との具体的態様の共通点として掲げる(1)~(3)の点(審決書3頁6行~4頁3行)に関し、「具体的態様(1)の点は、全体の具体的な構成比率を表すもので、両意匠の近似感をもたらし、両意匠に共通する具体的態様の(2)及び(3)の点は、両意匠の特徴を具体的に表すところであり、・・・両意匠の全体の特徴的な基調を形成し、両意匠の共通感を看者に強く印象付けるところであり、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。」(同6頁1~9行)として、本願意匠と引用意匠が類似すると判断した。しかし、まず、上記共通点(1)(全体の構成比率)については、この種保管庫又は金庫等において、全体がわずかに横長で扁平な略直方体状のものはごく普通に見られる一般的な形態であるから、両意匠間にのみ近似感をもたらすものではないし、上記共通点(2)(開閉扉部の構成)及び同(3)(操作パネル部の構成)の点は、両意匠の特徴を表すものではなく、両意匠の特徴は、上記1で述べた各構成態様にある。そして、上記1で述べた各相違点に係る態様は、意匠的に見て極めて大きな要素となるものであるのに、審決は、これらを踏まえない類否判断を行った誤りがある。
また、保安上の問題に関して、引用意匠においては、扉部が箱体本体の上面に単に載置状態で設けられているため、その載置状態の隙間にバールなどの治具を差し込んでこじ開け易いが、本願意匠のように扉部が嵌め込み状態にあると、バールなどの治具を使用してもこじ開けることが困難であり、保安上極めて有利な構成になっていること、操作パネルに関して、鍵穴の有無、テンキーが長円形か真円形かの相違、テンキーと表示部との配列の相違に係る差異点によって美観と使い勝手に相違が生じること等が、審決の類否判断においては看過又は無視されているほか、審決は「通常正面手前斜め上方からやや俯瞰的に見ることが多い」(審決書7頁16~18行)として観察方向を限定するなどの誤った手法を採用している。
なお、本願意匠の後願である甲第9号証(意匠公報)記載の登録第979278号意匠は、本願意匠よりもはるかに引用意匠と類似する構成態様を含んでいるにもかかわらず、登録されているが、この事実は、本件審決の判断が誤っていることを示すものである。
第4被告の反論の要点
審決の認定・判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
1 取消事由1(基本的構成態様の認定誤り及びこれによる相違点の看過)について
審決の基本的構成態様の共通点の認定(審決書2頁19行~3頁5行)は、本願意匠と引用意匠を、それぞれ全体として観察し、その骨格となる態様を概括的に認定したときに、両者が共通するものと認められたので、その共通点を、物品が備える機能が形態全体の中に、いかに具現化され、美的に秩序づけられているかという観点から端的に表現したものであって、その限りで本願意匠の基本的構成態様の認定としても誤りがない。
原告が審決において看過されたと主張する差異点a~cは、表現に違いはあるものの、審決中の具体的な態様の差異点(イ)において、「箱体本体、開閉扉、操作パネルの構成につき、本願意匠は、前辺縁に操作パネルを有する本体の上面に、平板状の開閉扉を本体の側板上端と面一状に填め込んだ構成とし、扉の開閉支軸(回転軸)側となる半円弧状に丸めた後端面及び両側端面が、本体の上面辺縁部に囲われて露出していないのに対して、引用意匠は、帯板状の操作パネルを前辺縁に積層状に取り付けてその余の上面周縁に段差をつけた箱状体とし、その底段部に、操作パネル部と面一状となる平板状の開閉扉を載置した構成とし、扉の開閉支軸(回転軸)側となる半円弧状に丸めた後端面及び両側端面が露出している点」(審決書4頁5~17行)と認定されており、かつ、この差異点については詳細に検討が加えられている(同6頁10行~8頁4行)から、原告の主張する差異点の看過は存しない。
また、原告は、本願意匠の特徴が扉部が箱体本体の上面において埋没状態に取り付けられている構成態様にあると主張するが、下記2で述べるとおり、失当である。
2 取消事由2(類否判断の誤り)について
本願意匠及び引用意匠の意匠に係る物品である保管庫及び金庫の従来の一般的な構成態様としては、略直方体状の箱体本体の一つの面のほぼ全体を扉とし、その扉に扉開閉用の手掛け(取っ手)部及び施解錠の操作部等を備えた構成態様のものが普通であり、操作部を設ける際に概して凹凸が形成されることがごく一般的である(乙第1~第4号証)。ところが、引用意匠と本願意匠は、①扉を設けた面(上面)に、扉とは別の開閉しない部分として、単なる縁枠の範疇を超えた一つのまとまりをもった区画を形成し、そこに施解錠の操作部を設けた態様であり、これらの点で従来の構成態様のものと根本的に異なるものであること、②両意匠は、扉部と操作部を一体的に箱体上面において面一状の平坦面状に形成し、全体として凹凸のほとんどないスッキリとした扁平な略直方体状が強調される態様としていることに特徴があり、看者が注意を強く惹かれるところとなっている。
これに対し、原告の主張する「額縁状」(正確にはコの字状)の構成態様は、側板上端(木口)がそのまま三辺に等幅の縁枠状に現れたまでのもので、しかも、その態様は、内側の開閉扉、操作パネルとの間に高低差が設けられていたり、縁枠を明瞭に際立たせるような特段の造形処理が施されたものでもない。また、閉扉時には開閉扉との境界、操作パネルとの接合部が単に一筋の細い線として現れる程度のものであり、形態全体として見ても、箱体の横幅、奥行きに比して縁枠がさほど大きな割合を占めるものでもない。結局、「本願意匠は、引用意匠のものの左右及び後方の周側に、薄い縁部あるいは周壁を一皮被せた態様を呈する」(審決書7頁4~6行)にすぎないものである。そして、原告の主張に係る「門柱状」の形態についても、側板の前端面がそのまま現れたもので、視覚上においても単に左右両端寄りにごく短い縦筋が現れるにすぎず、類否判断に影響を及ぼすようなものではない。
しかも、この種の保管庫及び金庫等の分野に限ってみても、本願意匠のごとく、箱体本体の上面又は前面の周囲を、縁枠状に囲むように側板上端を見せて、これに填め込むように扉等を表す態様とすることは極めて広くなされているものであり(乙第1~第3号証)、すでに慣用化された手法である。この点に本願意匠の特徴があるとの原告の主張は理由がない。なお、原告は保安上の観点についても主張するが、保安上の問題は意匠の対象外の事項である。
また、原告は、操作パネルの各部の配列の相違についても主張するところ、確かに、テンキー部の位置、表示部の数、鍵穴の有無、ボタンの形状に差異が認められるが、形態全体としてみると、テンキー部の位置については、両意匠とも中央より右に寄せている点で共通し、表示部の差異についても、これを横長長方形状のものとし、テンキー部に対して横に並置した点では共通し、鍵穴の有無についても、本願意匠の鍵穴は小さく、平坦面状に埋め込まれて目立たず、ボタンの形状の差異も微差であって、いずれも意匠全体としてみれば細部の差異であり、その類否判断に及ぼす影響は微弱である。
さらに、原告は、審決の判断に観察方向を限定した誤りがあると主張するが、本願意匠は、たんすや棚の引出内部等に固定する類のものであって、指向性が強く、その操作部と扉の構成及び位置から通常よく観察される方向である正面手前斜め上方からやや俯瞰的に観察した点を重視したのは当然であり、審決の判断手法に誤りはない。
第5当裁判所の判断
1 取消事由1(基本的構成態様の認定誤り及びこれによる相違点の看過)について
原告は、審決が本願意匠の基本的構成態様の認定を誤り、その結果、引用意匠との相違点を看過したと主張する。
確かに、本願意匠では、扉部と操作パネル部が箱体本体上面の両側面壁及び背面壁の内側に埋没状態に取り付けられる構成態様(以下「扉部等の埋没構成」ということがある。)を有するのに対し、引用意匠では、扉部と操作パネル部は箱体本体の上面を覆うように載置状態に取り付けられており、これに伴って、原告の主張する前記第3の1a~c記載の差異点を生じていることが認められる。
しかし、審決は、これらの差異については、原告の主張と表現こそ違うものの、差異点(イ)(審決書4頁5~17行)として認定していることは明らかであり、原告の主張する差異点の看過に係る違法は認められない。すなわち、審決の差異点(イ)に係る「本願意匠は、前辺縁に操作パネルを有する本体の上面に、平板状の開閉扉を本体の側板上端と面一状に填め込んだ構成とし、扉の開閉支軸(回転軸)側となる半円弧状に丸めた後端面及び両側端面が、本体の上面辺縁部に囲われて露出していない」(同4頁6~11行)との認定は、原告の主張に係る扉部等の埋没構成の指摘そのものであるうえ、上記cの派生的な差異点も具体的に示されている。そして、上記a、bの派生的な差異点については、審決に当該表現を用いた記載はないものの、これらの点は、審決の認定する上記差異点(イ)に伴う外観の相違を、別の観点から表現したものにすぎず、独立の差異点として取り上げて指摘しなかったとしても、審決の誤りとすることはできない(なお、上記bの中で原告が指摘する操作パネル部と側面壁との境界の「二重線」は、両者の間の隙間を示すものにすぎず、意匠全体としてみた場合、無視し得る微細な差異でしかない。)。
また、審決が、「錠操作パネル部・・・の残余の上面を後辺側を回転軸として開閉する方形板状の扉(蓋)部と」(審決書3頁1~3行)する点を本願意匠と引用意匠の基本的構成態様の共通点と認定したのは、あくまでも基本的構成態様として、両意匠を全体として観察し、上面が操作パネル部とその残余の扉部に大きく二分されるとの両意匠の骨格となる共通した態様を概括的に認定したものと理解され、具体的態様の差異点に関する審決の認定も踏まえれば、原告の主張する「額縁状」や「門柱状」の構成態様を否定する趣旨まで含むものでないことは明らかであるから、上記審決の認定は、何ら誤りとはいえない。
なお、原告の上記主張の眼目は、審決が扉部等の埋没構成及びその派生的な差異点を類否の判断において十分考慮していないという点にあるとも解されるが、この点については、取消事由2に関して後述する。
2 取消事由2(類否判断の誤り)について
原告は、本願意匠においては、箱体本体の上面に取り付けられている扉部と操作パネルが、箱体本体の上面において、両側面壁及び背面壁の内側に埋没状態に取り付けられている構成態様、すなわち、扉部等の埋没構成に特徴があって、それが本願意匠の基本的構成態様であり、他方、引用意匠においては、箱体本体の上面に取り付けられている扉部と操作パネルが、箱体本体の上面の全部を覆うように載置状態に取り付けれている構成態様に特徴があると主張する。
しかしながら、本願意匠及び引用意匠を観察した場合に、いずれも、直方体状の箱体の各面のうち最も変化に富んだ上面において、それぞれ異なる機能を有する操作パネル部と開閉扉部とが上下に截然と区分されたうえ、面一状の平坦面に形成されている点が、それ自体、直ちに看者の注意を惹くものであることは極めて明白である。のみならず、平成2年12月発行のコクヨ株式会社のカタログ(乙第1号証)、平成4年1月発行の株式会社岡村製作所のカタログ(乙第2号証)、平成2年1月発行の株式会社くろがね工作所のカタログ(乙第3号証)及び平成4年4月に特許庁が受け入れたものと認められる株式会社アルファのカタログ(乙第4号証)並びに弁論の全趣旨によれば、本願意匠出願当時、金庫ないし保管庫(運搬のため手で握持する取っ手が設けられたいわゆる手提金庫を除く。)については、略直方体状の箱体本体の1つの面のほぼ全体を扉とするとともに、その扉上に施解錠のための操作部及び扉開閉用の手掛け(取っ手)を設けた形態がごく一般的ないし標準的な意匠として採用されており、かつ、その場合に、扉部を、側板上端と面一状に埋没するように埋め込んで、扉の周縁を側板上端が縁枠状に囲む態様とすることも広く採用されていることが認められる。そうすると、本願意匠及び引用意匠の上記直方体状の箱体の上面において、操作パネル部と開閉扉部とが上下に截然と区分されたうえ、面一状の平坦面に形成されている形態は、従来の形態と質的に異なるものであって、その点においても看者の注意を惹くことになることが明らかであり、本願意匠及び引用意匠の最大の特徴を構成するものとして、両意匠の基本的構成態様をなすものというべきである。
これに対し、本願意匠における扉部等の埋没構成は、これから派生する原告主張の「額縁状」の形態及び「門柱状」の形態を含め、それ自体、単調で、看者の注意を惹きにくいものであることに加え、上記のとおり、従前から広く採用されている構成を、格別の創作性を加えることもなく、単に踏襲したものにすぎないから、本願意匠の特徴を構成するものとは到底いうことはできず、これが本願意匠の基本的構成態様であるとする原告の主張は失当である。
そして、上記のとおり、本願意匠及び引用意匠が基本的構成態様を共通することに加え、審決が具体的な態様における共通点(1)~(3)として認定した箱状体の横幅と奥行きの構成比率、扉部と操作部の構成比率、手掛け部の構成、操作パネル部の構成といった諸点を加味して、両意匠の近似感、共通感を導き、意匠法3条1項3号該当性を認めた審決の判断に誤りはないというべきである。
また、原告は、審決では、操作パネル部における鍵穴の有無、テンキーの形状、テンキーと表示部の配列に係る差異点によって美観と使い勝手に相違が生じることが看過されていると主張するが、審決の判断(審決書8頁4~15行)のとおり、当事者間に争いのない共通点(3)(「操作パネル部につき、その上面に、小さな略円形あるいは長円形状のボタンを、パネルの横幅の略1/3弱の長さに2列横隊に計12個並べて配列して、横長長方形状に表したテンキー部と、テンキー部よりもやや小さい横長長方形状の表示部を、並列かつ上下に等幅の余地を残してほぼ帯幅状に配し、上面全体を、テンキー部及び表示部がほとんど突出しない略平坦面状としている点」(審決書3頁5行~4頁3行))に包摂される程度のものであって、意匠全体としてみれば、限られた部分の中での細部の差異にすぎず、類否の判断に影響を及ぼすようなものではない。
さらに、原告は、審決に観察方向を限定した誤りがあるとも主張するが、開扉状態において通常正面手前斜め上方からやや俯瞰的に見ることが多いとの審決の認定(審決書7頁15~18行)は、その通常の設置態様及び使用方法を考えれば極めて常識的なものということができるから、これを誤りと認めることはできない。なお、保安上の効用及び登録第979278号意匠の登録に係る原告の主張は、それ自体、本願意匠と引用意匠の類否の判断に影響を及ぼすものとはいえず、失当である。
3 以上のとおり、原告の審決取消事由の主張は理由がなく、他に審決にこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 宮坂昌利)